『デザインの話を聞こう-対話と実験―』ゲスト:UMA/design farm代表 原田祐馬 レポート

開催概要

●日時:2020年2月12日(水) 17:30~19:00

●会場:ほんぽーと(新潟市立中央図書館 )多目的ホール
新潟市中央区明石2丁目1−10 /新潟駅より徒歩約10分 

生い立ちの中で転機になったのは、20歳のとき。デザインは日常の中にある、ということに気づき、猛勉強をすることから今に繋がるといいます。

原田さんが考える「デザイン」。それはイタリア語である<PROZETTAZIONE>という言葉に表されているそうです。これを英語にすると 

<PROJECT>

 PRO=前に JECT=投げかける


「デザイナーは、社会をしっかり見て統合的に物事を考える/未来に対して提案をする役割である」という考えのもと日頃意識していることとして、「犬の目 雑草の目 地球の目」で物事を捉えるということでした。自分の経験というのは邪魔してくる、新しい発見ができなくなってくるという意識を持って、自分の経験は大したことじゃないと思うようにしている、という言葉は、その後に出てくるたくさんの事例の中で納得させられることになります。

お話を聞きながら感じたのは、人の心がどう動くかを考えているということでした。競技場のデザインをする事例では、利用する側の印象だけでなく、施工に携わる地元の人たちがどのようにこの建物・環境と関わることが良いのか、というところまで考えられてデザインをされていました。

また、徹底的にリサーチをすることもUMA /design farmの特徴の一つです。例えば商品のパッケージをデザインするとき。世の中の同類の商品のパッケージをくまなく調べ、共通することを洗い出し、必要な情報を選んだり、逆に他にはない強みになる部分が何かを考えること。これは冒頭にもあった多元的な視点で物事を見る、という言葉と繋がっているように感じました。

社名である「UMA」は「=未確認動物」つまり、何かと何かの中間にいてそれらをつなぐ、という意味が込められているそうです。整えること、新たな関係性を作ること、など既存のものに捉われることなく、かと言って人の心から離れすぎない原田さんの「デザイン」のヒントを聞けた1日でした。

ゲスト

●原田 祐馬(はらだ ゆうま)  UMA/design farm 代表 / アートディレクター・ デザイナー

1979年大阪生まれ。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「共に考え、共につくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。グッドデザイン金賞(2016年度)、第51回日本サインデザイン賞最優秀賞(2017年度)など国内外で受賞多数。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科客員教授。愛犬の名前はワカメ。

来年度もひきつづき

今年度の勉強会では計3名のゲストにお越しいただき、デザインについてお聞きしてきました。東京・福井・大阪、それぞれの地域性や経験によってデザイナーのあり方が異なること、プロセスやチームの組み方など、たくさんの学びがありました。また、参加者の中には毎回欠かさず申し込んでくださる方がいたりと、続けることでの繋がりも生まれています。

これにて今年度の活動は最後となりますが、来年度以降も幅広く活動して参りたいと思っております。今後もどうぞよろしくお願いいたします!

NEWGATE事務局

〒951-8063
新潟市中央区古町通3番町556
TEL:025-201-8427
MAIL:newgate2020design@gmail.com
担当:渡辺

助成:
アーツカウンシル新潟
((公財)新潟市芸術文化振興財団)
「文化芸術基盤整備促進支援事業」

『 私とデザイン 』新潟の福祉をおもしろくの会×NEWGATE デザイン公開相談会vol.4 レポート

2020年2月12日、新潟市中央区にて「『 私とデザイン 』新潟の福祉をおもしろくの会×NEWGATE デザイン公開相談会 vol.4」が行われました。

今回はこれまでとは異なり、福祉関連のご相談を募り、6件の事業者さまよりご相談がありました。アドバイスは、福祉のデザインやプロジェクトに関わってきたデザイナーや福祉の現場で活動している4名で行いました。

<ハンドメイドの小物やアクセサリー>

一点もののかわいいぬいぐるみやアクセサリーを手作りし販売しているけれど、もっと知ってもらうにはどうすべきか、というご相談に対して、それぞれの目線からアドバイスがなされました。

・原田(商品パッケージやプロジェクトを多く手がける):「キャラクターものはそれぞれに名前を付けて展開することで世界観を作れる・愛着を持ってもらえる」「パッケージは温かみを感じられる紙製の箱にすると良い」

・岡部(福祉施設常任理事):「手を動かすのが苦手だったりできなかったりするメンバーに名前を付けてもらったり、キャラクターごとの性格や血液型を決めてもらったりすることもできる」

・迫(自ら雑貨店を運営):「モノによって売り場が変わるためそれぞれに合った営業先に行くこと」「値段の記載の仕方やシールの仕様に気を配ること」

・高橋(WEBデザインを多く手がける):「キャラクターが活きるよう、アニメーション・動画を作成するとわかりやすい」

<施設の記念グッズ>

創立記念になにか作ろうという声から、オリジナルのデザインでTシャツを作っているけれど、デザインについてたくさんの意見がありなかなか決められない、というご相談。お話をお聞きする中で、担当者や意思決定のある人が定まらなかったりあやふやであることがわかってきました。どんなチーム・組織でも起こりうることです。そんな時の考え方として

①担当者の思いの詰まったモノを作る(自分でも自信のないものはうまくプレゼンできないし、愛着も半減。。。)

②お菓子など食品にする(身に付けるものはハードルが高い。好みが分かれがち。)

③主力もしくは長年作っている商品の記念品バージョンにする

など、ほんの考え方の一部ですが、ご提案しました。

<オリジナルイラストのドリップコーヒーのパッケージ>

利用者さんのイラストを毎回パッケージにして販売しているという事業者さん。あまり代わり映えがしなくなってきているというご相談です。

実際に販売されているものをお持ちいただき、アドバイザー・会場にいる皆さんと共有しながら考えていきます。見てみると、大胆な色使い、それぞれ個性のあるとても素敵なパッケージに一同びっくり。長くやっているとどうしても客観的に考えられなくなってしまうことはよくあります。なので、周りの方やこうした場で意見を聞いてみるだけでも大きなステップになると私たちは考えています。

またお客さんから要望のあるギフトセットを作りたいということについては、「中身の力強さに対して外側の箱はシンプルの方が良い」「どんな価格のギフトを求められているかヒアリングしてみることも必要」というコメントがありました。

<焼き菓子の販路拡大>

体に優しくて材料にもこだわって作っているお菓子についてのご相談。ちょうど15時、(そろそろお腹が空いてきたアドバイザー陣にとってありがたいことに)試食させていただきながらのアドバイスです。

まず価格。食材のこだわり・手間のかかり具合に対して設定が低い、という意見がありました。もちろん、買う側としては安い方が良い。ですが、製造のうえではたくさんのコストがかかります。さらに、販売するうえでもコストがかかります。就労支援事業の福祉施設では「安定して続く仕組み」を考える必要があります。

次にネーミング。食感をイメージさせるネーミングですが、「実際の食感と若干差がある」というコメント。これまでの相談会でも出てきている「ネーミングとキャッチコピー」はとても重要です。

実際に手にしてみて、丁寧に作られていること、パッケージされていることが伝わる商品ばかりでした。そのことを「正しく」伝えるためにどうしたら良いか。皆さんだけで考えるだけでなく、ぜひ「伝える専門家」であるデザイナーにご相談ください。

また、デザイナーにとっても「デザインがまだまだ役に立てる、活用するべき場所がある」ということをあらためて考える機会となり、双方にとって学びの場となりました。

アドバイザー

●原田 祐馬(はらだ ゆうま)
UMA/design farm 代表 / アートディレクター・ デザイナー
1979年大阪生まれ。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「共に考え、共につくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。グッドデザイン金賞(2016年度)、第51回日本サインデザイン賞最優秀賞(2017年度)など国内外で受賞多数。京都造形芸術大学空間演出デザイン学科客員教授。愛犬の名前はワカメ。

●岡部 太郎(おかべ たろう)
一般財団法人たんぽぽの家 常務理事
1979年、群馬県前橋市生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。高校時代から地元NPOが主催するコミュニティアート活動に参加。。たんぽぽの家では障害のある人のアート活動の発信や、地域でのアートプロジェクトのマネジメントをおこなう。近年は障害のある人とともに新しい仕事やはたらき方を提案、実践する「Good Job!プロジェクト」を展開。厚生労働省「障害者芸術文化活動普及支援事業」の近畿ブロック広域支援センター「障害とアートの相談室」も運営し、日々相談支援や啓発活動をおこなっている。

●迫 一成(さこ かずなり)
NEWGATE 代表
福岡県生まれ。hickory03travelersを運営し、イラスト、グラフィックデザイン、商品開発、グッズ制作、印刷物、デザインと社会を結ぶ企画・開催、空間デザイン商店街を楽しむ活動など、幅広く活動中。グッドデザイン賞2015受賞。上古町商店街副理事長。長岡造形大学非常勤講師。

●高橋 徹(たかはし とおる)
ツムジグラフィカ 代表
燕市生まれ。デザインとアートを通し、ものづくりや地域、社会課題に関わる支援業務を行う。グッドデザイン賞2015・2017受賞。

来年度もひきつづき

2018年から始まったNEWGATEの取り組み。たくさんの方にご参加いただき、特に今年度は充実した1年となりました。今年度の相談会はこれにて終了となりますが、ひきつづき来年度以降も様々な活動をしていく予定です。この新潟で、デザインを活用する皆さんやご依頼をいただく私たちデザイナーにとって、より良いものになるよう今後ともよろしくお願いいたします!

主催

新潟の福祉をおもしろくの会 、NEWGATE

助成

アーツカウンシル新潟((公財)新潟市芸術文化振興財団)「文化芸術基盤整備促進支援事業」

NEWGATE事務局

〒951-8063
新潟市中央区古町通3番町556
TEL:025-201-8427
MAIL:newgate2020design@gmail.com
担当:渡辺